音読

一日一曲 日々の気分で一曲をチョイス。 書くこと無くても音楽がどうにかしてくれる! そんな他力本願なブログです。

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第69週 過去現在未来|Salamander / ELLEGARDEN

この夏、ELLEGARDEN(以下、エルレ)を十数年ぶりに見た。
 
活動休止してから10年、その数年前からあまりにチケットが取れなかったこともあり見に行っていなかったので十数年ぶり。最後に見たのはロック・イン・ジャパン・フェスティバルで、このライブを見るまでにも少し期間が空いていたからか、アンコールで必ずやる“Make A Wish”の歌詞が思い出せなくて悲しい気分になったことをよく覚えている。何万人もの聴衆がエルレの音楽に合わせてジャンプすると波打つように地面が揺れて、その光景をかなり冷静に眺めていて「なんか気持ち悪いな」と思ったのが最後の記憶。自分もずっとその中で一緒にジャンプしていたはずなのに、どこでこんな気分を覚えてしまったのだろうと、その場で立ち尽くしていたな、なんて。そのあたりからいわゆるロキノン系と呼ばれるバンドはぱったり見に行かなくなった。
 
思い返せばこの10年、私の生活は大きく変わった。住む場所が変わったし、仕事も変わったし、聴く音楽も、価値観も。彼らの復活が10年ぶりだと聞いて、10年前の私って何が好きだったっけ?と思い出すの難しかった。
 
十数年ぶりに見たエルレは、びっくりするほど変わってなくて驚いた。私も十数年前には歌詞が思い出せなかった曲も、すんなり歌うことができた。というか歌詞をほぼ思い出せて驚いた。まるで記憶の蓋が解放されたような感じで、不思議な気分だった。歳をとればとるほど記憶が曖昧になっていくのかと思ったけど、自分が大好きなものは忘れずにいられたことがとても嬉しかった。ライブに行くのが大好きで、どうしたら1本でも多くライブに行けるか……そんな気持ちを持っていた過去の自分も思い出すことができた。そういう感情は歳をとるとなくなるのか、自分が変わってしまったのか、置かれた環境のせいなのかわからないけど、昔の自分のように音楽に興奮できるような自分になりたいなと、ライブを見ながら考えていた。
 
ここ数年は7年〜10年前に蒔いた種が目を出すような出来事が多くて、昔を思い出すことが多い。2年前から行っているSXSWもそうだ、あれも23歳のときに魅了されたものの1つである。SXSWではオースティンの街に降り立つと、23歳の時のことを思い出す。就職活動を微塵にもしてなかった私は勢いでアメリカに行って将来の心配なんて全然してなかったな、とか。地震、すごかったよな、見知らぬ白人のおばあちゃんに「日本は大丈夫?」と突然話しかけられたな、とか。そのときに出会った大人たちからたくさん応援してもらっていたな、とか。(嫌なことは時が経てば風化されるんだな、ということにも気づいた)その時にアメリカに行っていなかったら、この歳になってそこに行こうとは思わなかっただろうし、そこに今の自分に必要な何かがあるということもわからなかったと思う。過去の自分がSXSWを一発で気に入ったおかげでまたオースティンに行けたと思っているし、過去の自分の行動のおかげで今の自分が救われるようなことが多いなと、陳腐な思考だけどこんなことを最近よく考えている。エルレのライブを見に行って、また奮い立たされる自分がいて、今このタイミングで見に行けたことに意味があるし、過去の自分がエルレのことを好きでよかったなと思った。
 
過去と今と未来は一直線につながっていて、自分を作り上げている。今と過去では見ている景色が違うし、多分今と未来ではまた見える景色が変わるんだと思う。今の私が未来の私がまた音楽を好きになれるように、これからもミュージシャンや音楽と向き合っていこうと思う。そんなことを考えさせられたライブの話でした。
 
text by 岡安いつ美

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