音読

たぶん週刊ランラン子育て帖

どもんらんってどんな人?

2012年の1月、音読編集部のもとに赤ん坊が生まれました。名前はれんたろう。「にゃあ」というなき声がチャームポイントの男の子。新米ママ土門、今日も子育てがんばります。

好きなもの認定の話

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NHKのEテレに、時々「おねんどお姉さん」という方が映るときがある。

おねんどお姉さんは何でもねんどで形にしてしまうお姉さんで、

たとえばモンブランや肉まんなどをねんどで作ったあとに、

必ず「世界ねんど遺産に認定です」と言う。

 

それを廉太郎と観ながら、田口ランディの

「世界は自分が編集している」

という言葉を思い出した。

わたしの好きな言葉だ。

 

世界遺産認定もノーベル文学賞もミシュラン三ツ星も、

あたまに「My」をつければ誰にでもどこにでもつけることができる。

そういうのを自分の人生に増やしていけるのって、豊かでいいなあと思った。

 

 

と思いながら日々を過ごしてたら、

ある日廉太郎と食べた食パンがすごくおいしかった。

あまりにおいしかったので感動し、このおいしさは「おいしい」では足りないと思った。

(ちなみにこの食パンは、下鴨にあるナカガワ小麦店さんの食パンです)

 

それで、

「ママは、今日からこれを『好きなもの』にします」

と廉太郎に宣言した。

 

そしたら廉太郎が

「ママはこれが好き、ってことか」

と言ったので、

「うん、この食パン、『ママの好きなもの』に認定です」

と答えたら、「おねんどお姉さんや!」と廉太郎が喜んだ。

 

それ以来ふたりの間で、好きだと思うものに出会うと、

「好きなもの認定!」と言い合っている。

廉太郎はそのとき、シナモンロールを

「すきなものにんていする」と言っていた。

 

 

先月末に引越しをした。新居に住んで1ヶ月がたった。

朔太郎の誕生に、引越しと、

うれしい変化ではあるけれど家族に疲れが出てきている。

 

このあいだ、子供の前でひどい夫婦げんかをしてしまった。

廉太郎がそのあとから「おなかがいたい」と言いだして、

その日は保育園を休んだ。

 

病院に行ったら、おかしなところはないと言う。

「お母さんがおなかに手をあててあげてください。

甘えたいんだと思います。安心したらきっと治ります」

とお医者さんに言われて、やっぱり精神的なものなんだな、と思った。

 

朔太郎にかかりっきりであまり構ってやれてない上、

目の前で夫婦げんかをするという自分を反省した。

 

ただやっぱりわたしも疲れていて、ちょっともう無理だなあと思って、

病院の帰りに、前の家の近所にあるチョコレート屋さんに行った。

わたしはトリュフを、廉太郎はホワイトチョコレートを買って、

ベビーカーを押して歩きながらふたりで食べた。

 

「おいしい」と廉太郎が言うので、

「ママの好きなもの認定やからな、ここのチョコは」

と言うと、廉太郎が嬉しそうに「そうか!」と声をはりあげて、

「これママのすきなものにんていだったかー」

と言った。

 

ついてないと思うときも、ここに来ればおいしいチョコが必ずある。

それは村上春樹の言う「小確幸」で、「小さいけど、確かな幸福」だ。

それを見つける手段としての「好きなもの認定」だな、と思った。

 

ある依存症を治すには、その他の依存先を増やすのが得策なのだと本で読んだ。

あれがだめでもこれがある、という人間は強い。

 

人生いろいろあるけれど、辛いときにはきっと、

こういったささやかだけど確かな「好きなもの」が救ってくれる。

だから、『好きなもの認定』は生きる知恵なのだ。

 

 

 

「廉太郎もおいしいんだったら、このチョコ好きなもの認定したらどう」

と言ったら「うん、にんていする」と答えた。

 

 

母という不安定な存在よりも、好きなもの認定したものたちのほうが、

彼らにとって役立つことがきっとある。

 

不安定なわたしでも、

彼らにそれを増やしてやることくらいならできるな、と思っている。

 

 

 

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