音読

たぶん週刊ランラン子育て帖

どもんらんってどんな人?

2012年の1月、音読編集部のもとに赤ん坊が生まれました。名前はれんたろう。「にゃあ」というなき声がチャームポイントの男の子。新米ママ土門、今日も子育てがんばります。

2回めの地蔵盆

蜀咏悄

先週の金曜かなりお酒を飲んでしまって、翌日は二日酔いだった。

土曜の朝、外からかんかんかんかんかん鐘をうつ音がして、

ものすごい気持ち悪さで目が覚める。

れんたろうが「おきてーおきてー」と飛び乗ってきて、

同じく別の飲み会で二日酔いの夫が私より軽症だと自覚したためか

のそのそ起きて相手をしてくれたので二度寝。

私が起きたのは10時半ごろで、「やばい、今日地蔵盆だ」と遅まきながら気づく。

 

地蔵盆というのは京都の風習で

子供が元気に過ごせるように願いを込めながらひたすら子供を遊ばせる日、

というふうに近所の方から聞いた。

町内の路地めいた、車の通らないところにテントを張って

お供え台と、たくさんのおもちゃを用意する。

そこで町内の子供が集まって一日中遊ぶ。

各自の家にはちょうちんが配られ、そこに子供が思い思いの絵を描いて

当日玄関先に飾るのだけど、それがうちに届いていない。

 

にぎやかにちょうちんが飾られている町内を眺め、

もしかしてハブられたかと二日酔いの頭で考える。

何で?私がよく酔っ払って帰ってくるから?

それとも酔うと騒がしいから?騒音問題で村八分?

酔っ払った次の日私は非常にナイーブなので、

ネガティブな感情に襲われ急いで準備する。

すっぴんでれんたろうを連れて家を出て、

みんなが遊んでいる場所へ急ぐ。

 

ちょうちん問題はすぐに解決した。

ちょうちんを配る日、うちが不在にしていたかららしい。

「一個残ってたわそういえば!」とおばちゃんが謝りながら取ってきてくれた。

れんたろうが「カニかいて」と言うのでカニだのねこだのをばばばっと描いて速攻飾った。

とりあえずハブられていないことがわかって安心した。

 

引っ越してきて2年。地蔵盆も2回目だ。

れんたろうは周りの子に比べて友達がまだ少なく、

特におにいちゃんの友達はまったくいないんだけど、

やっぱり男の子と遊びたいらしくて、男の子の群れのなかに

入っていきたそうだった。私のほうを見るれんたろうに

「遊んできてごらん。ママここにいるから」と言うと、

うなずいてとことこと輪の中に入っていく。

お兄ちゃんに近づいて即「それ、かしてくで」と言っていて笑う。

でもお兄ちゃんたちは小さい子に慣れているのか

すんなりと「ええよ、こうやってやんねん」と野球盤を貸してくれた。

野球盤を貸してもらってもうまく使いこなせるわけではないのだけど、

がちゃんがちゃんと見慣れぬおもちゃと格闘する息子を

お兄ちゃんたちが見守ってくれる光景はとてもよかった。

 

かんかん鐘を鳴らしていたのはある9歳の少年が帰ってきた。

プログラムが進行するたびに鐘を鳴らしながら歩き、住民にそれを知らせるのが

彼の役目なのだそうだ。

その少年がれんたろうのそばに突然寄ってきて

「きみ」

と言うので私は「おっ」と思ってその様子を見ていた。少年は

「きみ、これ鳴らしてみ。ほんまはぼく以外慣らしたらあかんねんけど、とくべつや」

と言う。

れんたろうはぽかーんとして、鐘をつるすひもを握りたがった。

「ちがうちがう、鐘をかんかんって鳴らすんや。ほら」

少年は鐘を鳴らして見せてやる。ようやく飲み込んだれんたろうは

かんかん鐘を鳴らし始めた。

「よかったねーれん」

と私が言うと少年は得意げな顔でこっちを向いた。

「鐘うつんは代々町内の子供のうちのひとりに受け継がれる役割やねん。

ぼくは5歳くらいんときからこの役割やってるんやけど、

そろそろひきつがなあかんと思ってる。

でもな、やりたがる子がおれへんねん」

確かに、さっき「鐘鳴らす人ー!」と言っていたのに

誰もおもちゃから顔を上げなかった。鐘鳴らし係は不人気のようだった。

「だからな、ぼくはきみにこれをひきつごうと思う。

きみはまだちっちゃいから、もうすこし先やけどな。

そうやなー、あと2年くらいしたらいけると思うわ。

ぼくは5歳からやってるからな」

急遽、鐘鳴らし係を任命されたれんたろうは、意味がわかっている様子もなく、

かんかん鐘を存分に鳴らしたあと、満足して車のおもちゃに戻っていった。

 

午後、スイカ割りが行なわれて、小さい子から順にスイカを叩いた。

れんたろうも小さい子のグループに入り、棒を持って叩く。

てんてんとスイカを叩いてはにかむれんたろうも、

すぐに威勢よくスイカを叩き割るようになるんだろう。

お兄ちゃんたちが割ったスイカを食べながら思う。

 

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