音読

一日一曲 日々の気分で一曲をチョイス。 書くこと無くても音楽がどうにかしてくれる! そんな他力本願なブログです。

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第1週 鉄風 鋭くなって / NUMBER GIRL

 

週に一度、音読スタッフの交代制で、「どうしようもなく好きな曲について語る」ブログを始めることにしました。
流行とか、宣伝とか、キュレーション云々とか、これ書いたら人にどう思われるやろうとか「いいね!」やシェアの数が少なかったらやだなあとか、そういうしがらみ一切なしに、とにかくどうしようもなく好きな曲について自由にのびのび語ろうではないか、という連載です。楽しそうでしょう。

 

第1週目は、音読副編集長の土門がお送りいたします。
「どうしようもなく好きな曲」と言えばすぐ思いついたのが、NUMBER GIRLの『鉄風 鋭くなって』だったのでそれについて書きます。
この曲、めちゃくちゃ好きです。多分人生で一番多く聴いている曲です。すんごい好き。

15、6歳のころ初めてNUMBER GIRLを聴いたのですが、それがこの曲でした。
片田舎のレンタルCD屋で、うすよごれた真っ黄色いジャケット(ランドセルを背負った小学生の絵と、「NUMBER GIRL」という尖った文字が描かれている)が何か気味が悪いと思いながら借りました。何で借りたんだろう?
でも、初めて聴いたときすごい衝撃を受けたのは覚えています。
「これは私の曲だな!」と思いました。
そういう曲に会えて、とても嬉しかったです。

 

NUMBER GIRLの曲を聴いたときに必ず起きる感情は「何か懐かしい」と「何かさみしい」というもので、なかでもこの曲はそのふたつの感情をいちばん激しく引っ張りだします。

ギターもベースもドラムも、すごくかっこいい。
尖ってて、乾いてて、メロディアスで、ノスタルジックで、なんかいろんな要素が混じり合っていてすばらしいなあと思います。
それにしても一番すごいなと思うのは向井秀徳の歌詞で、よくこんな歌詞が書けるなと何度聴いても本当に驚きます。

 

だって
「発狂した飼い猫を川へ捨てに行って」
「中古の戦車を拾って帰る」
んですよ?

「夕暮れ時間 俺いる 橋の上」
で、
「ボルトの赤サビ 隅田川」
「屋形船では花遊び」
ときて

極めつけは
「鉄風の中 少年たちは玉拾い」
「風鋭くなって 都会の少女はにっこり笑う!!」
ですよ?

 

すごいなあと。ようわからんけどすごいなこの歌詞は、といつも思います。
情景がばばっと浮かんで、胸がひりひりする。

ものすごい「ひとり」感です。

 

この曲を聴くと「そうか、これでいいのか」と思います。

「ひとりでもいいんだな」と。
「とにかく、さみしさとか悲しさとかむなしさとか、全部ひきずりながら生きてけばいいんだな」と。

 

それは鈴木清順の映画『ツィゴイネルワイゼン』を観たときの感覚によく似ています。
あの映画も全然意味がわからないけどすごい映画で、観終わったときに同じことを思いました。

 

鈴木清順の座右の銘は「一期は夢よ ただ狂え」だそうです。
これは閑吟集に収められた室町時代の歌謡で、原文は
「なにせうぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂へ」。

まじめくさった顔をして何になる。人生なんか所詮夢のようなものなのだから、ただ狂えばいい。
という意味なんだそうです。

 

私は「表現」について考える際に、必ずこの言葉を思い出します。
そして、「正気のまま狂う」のが表現なんじゃないかなと思う。

 

それは「ひとり」を受け入れることでしか、
そして「さみしさとか悲しさとかむなしさとか」をすべて受け入れることでしかできないことだと思います。

 

私がNUMBER GIRLを繰り返し聴くのは、きっとそれを確かめたいからだ。
今、この文章を書いていてそう思いました。

 

私の言いたいこと伝わりましたか?

 

text 土門蘭

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