音読

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第37週 焼け野が原 / Cocco

 

このあいだ夜にぼんやりテレビを観ていたら、DREAMS COME TRUEの中村正人がマツコデラックスと喋っていて、それがとてもおもしろかったので、じっと最後まで観てしまいました。

 

番組の趣旨は、マツコデラックスの「ドリカムアレルギー」を治す、というもので、それはそれでおもしろかったのですが、中でも私が興味をひかれたのは、バンド名についての話でした。

 

「DREAMS COME TRUE」というバンド名に、吉田美和はずっと反対していたらしいです。

いわく「わたしはそういうタイプの人間ではない」と。

明るそうに見えるけど、実はひどい人見知りで無口なひとなのだと、中村正人は吉田美和のことを話していました。

 

吉田美和は2歳の頃から、自分は「歌をうたって生きていくんだなあ」と思っていたそうです。

彼女のアカペラを聴いて、すぐに中村正人は彼女と組もうと決めたとのこと。

今は脱退してしまった西川隆宏は、「吉田のためならなんでもする」と、吉田美和の才能に惚れ込んでいたそうで、中村正人は「吉田は天才だから、器に入れておかないと商売にならない」と笑っていました。

 

マツコが「バンド名からしてきらきらしすぎる」みたいに言ったとき、

「DREAMS COME TRUE。夢は、叶う。でも、幸せになるとは言っていない」

というようなことを中村正人が言っているのを見て、「なるほど」となんだかすごく納得しました。

そして、いいバンド名だな、と初めて思いました。

 

 

 

 

そんな番組を観ながら、同時に、15年くらい前に見た番組のことを思い出しました。

活動休止前に、ミュージックステーションで『焼け野が原』をうたったCoccoの映像です。

 

私はそのとき、初めてCoccoという人を見ました。

Coccoはタモリさんと全然うまくしゃべれていなくて、ここにいるのが苦痛で苦痛でしかたがない、という顔をしていました。

私はそんな人をテレビで見るのは初めてだったので、「この人、大丈夫かな?」とハラハラしていました。

何かの病気なんじゃないか。具合が悪いんじゃないか。早く帰らせてあげたほうがいいんじゃないか。

中学生だった私は、まるで無理やりステージに立たされた極度の緊張症の子供を見るようにそわそわしてしまって、でも、チャンネルを変えることもできず、じゃあ何ができるかと考え、せめて最後まで見届けようと、テレビの前で正座をして見ていました。

 

『焼け野が原』をうたうCoccoを見て、私は本当に驚きました。

床の上に裸足で踏ん張って、長い髪の毛を振り乱しながら、大きな口を開けて、腕をいっぱいに広げて、泣いているようにうたう彼女を見て、「こんな人がいるのか」「すごいものを見た」と思いました。

 

「そうか。この人はうたうことでしか生きていけないのか」

そうすんなり理解できました。自然なこととして。そういう体験は初めてで、私も気づいたら号泣していました。

Coccoはうたい終わったらスタジオから文字通り逃げていきました。

そのあと、タモリさんの横にいたアナウンサーの女性が泣いているのが少しだけ映りました。

 

 

「夢が叶う」ことと「幸せになる」ことは別のことで、

「これでしか生きていけない」というのもまた、「幸せである」こととは別のことなんだなと思います。

 

時々そういう、肉体が音楽、みたいな人がいて、そういう人が音楽を奏でると、肉体が削れていっているように見えるときがあって、圧倒されてどうしようもない気持ちになるときがあります。

 

 

text by:土門蘭

 

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