音読

たぶん週刊ランラン子育て帖

どもんらんってどんな人?

2012年の1月、音読編集部のもとに赤ん坊が生まれました。名前はれんたろう。「にゃあ」というなき声がチャームポイントの男の子。新米ママ土門、今日も子育てがんばります。

面接

4月に保育所に入れたい人たちのための一斉面接の日。区役所には開始時間すぐにも関わらず多くの親子たちがいた。ホワイトボードに貼ってある紙には各保育所の受け入れ人数が表示されていたのだけど、どこも1歳児は厳しそうだ。

自分たちの順番になるまで遊びスペースで遊んで待つ。れんたろうは遊びスペースに収まりきらず、はいはいでどんどん外へ出かけていってしまう。それを追っかけてだっこして連れて帰って、そしたらまた脱出して…の繰り返しで、面接前にすでに疲労困憊。

ようやくおとなしく遊び始めたかと思ったら、3歳の女の子にちょっかいを出し始めた。髪の毛をなでようとしたらしく手を伸ばしたれんたろうに対し、女の子は敵対心をむき出しにして「いたーい!!」と叫ぶ。れんたろうを慌てて止める私。女の子のママが「別に痛くないでしょう、大声出しちゃだめ」とたしなめたら「いたいもん!!いたいもん!!」とさらに大きな声をあげる。一瞬面接会場がしんとなった。れんたろうはびっくりしたらしく固まっている。「ごめんね」と謝ったが女の子には無視されてしまった。三歳児にビビる27歳。気を取り直したれんたろうが女の子のそばにあったノンタンの絵本をぱらぱらめくり始めると、女の子は「まだ読めないくせに」とつぶやいてれんたろうの手から取り上げた。れんたろうはぽかんとしている。まだ自己主張ができないのだ。私は女の子の感情表現の複雑さに驚き、そしてばかげたことにうっかり傷ついてしまって、不覚にも泣きそうになった。さすがにこらえたけど。女の子のお母さんは「女の子は難しいです…」と言っていた。情けない私とは対照的にれんたろうはめげずにばぶばぶとおもちゃに近づいていく。

 

れんたろうと同い年くらいの男の子がはいはいで私の近くに来たので、手元にあったカスタネットを手渡してみた。男の子は嬉しそうに笑ってカスタネットをなめようとした。そりゃそうだ、れんたろうも何でもなめる。でもそれを見たその子の父親が「なめるなって言ってるやろ」といじっていた携帯で突然その子の頭をがつっと殴った。しかも角で、かなり強く(見えた)。「あっ」と思わず私は声をあげた。まわりのママたちも「あっ」と言った。男の子は泣かなかった。口をあけてぼんやりしていた。そしてまたなめようとしたのでまた叩かれていた。「痛…」と、ママたちが言った。それでもその子は泣かない。慣れてるのかもしれない、と思ってまた私は泣きそうになった。これは虐待かもしれないと思い、その子のからだにけががないか探してみたけどわからない。父親は男の子を叩いた携帯を見ながらどこかへ行ってしまい、かわりに母親が来たので私は観察を続けた。でも母親は優しそうだった。その子の鼻水を優しくぬぐってあげながら話しかけてる。私は何と言えばいいのかわからず、結局何も言えなかった。もやもやがずっと続いた。

面接はつつがなく終わった。予想どおりの質問に答えるだけ。第一希望の保育所に入れない可能性もあるので言われ、結局第五希望まで出した。

 

 

 

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