音読

たぶん週刊ランラン子育て帖

どもんらんってどんな人?

2012年の1月、音読編集部のもとに赤ん坊が生まれました。名前はれんたろう。「にゃあ」というなき声がチャームポイントの男の子。新米ママ土門、今日も子育てがんばります。

あたらしいこと、続けること

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9月の下旬から再び仕事を始めた。

勤め先は音読の発行元でもある翠灯舎。

音読編集長、通称郁ちゃんが社長を務めるこの会社で、

私もこれから働くことになった。

 

郁ちゃんと私は10年くらいの付き合いなんだけど、

出会ったときからずっと彼女とは一緒に何かを作り続けている。

フリーペーパーは「音読」の前にもいくつか一緒に作っていたし、

そのほかイベントもやったし、WEBサイトも作ったし、新聞も作ったし…

それからTSUTAYAに飾る大きなPOPも作ったりした。

 

私と郁ちゃんのふたりだけで何かを作るのは「音読」が初めて。

でも、それまでに何度も一緒に作ってきたし、

お互いがお互いの「作り方」みたいなものを見て知っていたので、

全然不安感はなかった。

この人とならやってけるなとお互いに多分思っていて、

今までの継続みたいな気持ちだった。

郁ちゃんは「サポーターじゃなくてパートナーが欲しい」ってよく言っていて

土門はパートナーなんだって言われた。

私も同じことを考えていたからそれはとても腑に落ちた。

私もサポートなんかしてほしくない。サポートなんかされても孤独なだけだ。

だから一緒に走れる仲間っていうか、郁ちゃんが言うところのパートナーが欲しかった。

 

でも、それを改めて口に出されて言われたことで、

緊張感がふわーとからだをまとうように生じた。

十歳年上の郁ちゃんにとって私は経験が少なく思慮の浅い若手だろう。

でも、そこは彼女がやってくれるから、

土門はブレーキをかけずに突っ走ってね、と言われたんだなと瞬時に理解できた。

 

人と何かを作るというのはとても面倒だし難しいことだ。

これまでに何度も作りかけては挫折してきた。

一回作ることはわりと簡単にできるが、続けることが難しい。

いつの間にか消滅している。

いつの間にか「なかったこと」になっている。それは何度も経験した。

 

「音読」はもう3年になるが、

私が作ってきたもののなかでいちばん続いているし、

いちばん多くの人に認知されている。

それももちろん嬉しいことなんだけど、

ひとりでは到底行けなかった場所に、一緒に行けた人がいる

というのがいちばん嬉しいかもしれない。

続けるということはそういうことなんだとわかった。

それはトレーニングと似ている。

ただ地道にアイデアを出し続け、スケジュールを決め続け、文字を書き続ける。

手を動かし足を動かし頭を使う。

それらを淡々と続けることで筋力は確実に身につき、

いつの間にか遠くまで来れてしまっている。

ひとりでは絶対にできなかったし来れなかった。

単純に力が二倍になるというのもあるし、

続けようという姿勢をお互いに見せることで続けることができた。

パートナーってそういうことかと身をもって最近理解した。

 

次は「会社」という場所で、「ビジネス」というジャンルで、

郁ちゃんと、そして他のふたりと何かを作っていく。

やっぱりここでもサポートではなく、私はパート「部分」を務めるのであって、

そこで地道に筋力をつけていく。

そうやってみんなのパートが集まればびよーんと遠くまで飛べるんだろう。

この業界ではぺーぺーの初心者なので

足を引っ張らないようにという緊張感もある一方、わくわくもしている。

私はやっぱり仕事が好きなんだ。

そのことが知れただけでもすごく嬉しいし安心した。

楽しく仕事ができるっていうのは、それだけである種の自信になる。

 

仕事が始まってから、れんたろうが何か変化に勘付くのではないかと

保育士さんと少し心配していたのだけど、全然そんなことはなかった。

私自身生活にメリハリがついたので、れんたろうとの時間や家事をしている時間が楽しい。

茂木健一郎が、

「からだのコリは、同じ場所ばかりつかっていると生じる。

だから、コリをとろうとするのであれば、違う場所を使ってみるといい」

と言っていたんだけど、

たぶん今、私は仕事と家とを行ったり来たりして、一日のうちに違う場所を使う時間があるから、心のコリがほぐされているのではないかと思う。

 

金曜は、会社のみんなとお伊勢参りに行った。

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れんたろうも連れていったので

彼は初めてのお伊勢さんとうなぎを経験した。

うなぎをすごくおいしく感じたらしく、

うまきでもうなぎだけピンポイントで狙っていた。

私のぶんもよこせと手を伸ばしてきたが、

母は心を鬼にして自分のうなぎを死守した。

 

蜀咏悄 1

 

 

この日は何度もおまいりして

家族のことと会社のこと、そして少し自分のことも祈った。

 

 

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私にはいろんな顔がある。

そのどれも、大切にしていきたい。

 

 

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