音読

たぶん週刊ランラン子育て帖

どもんらんってどんな人?

2012年の1月、音読編集部のもとに赤ん坊が生まれました。名前はれんたろう。「にゃあ」というなき声がチャームポイントの男の子。新米ママ土門、今日も子育てがんばります。

だめな一日

蜀咏悄 3

今日は大変だった。

れんたろうが今まででいちばんのぐずりっぷりを見せてくれた。

私も今まででいちばんれんたろうに腹を立てた。

だから今、すごく疲れている。疲労困憊。

 

今日明日と夫が家にいないので、れんたろうとこの土日を過ごすことになっていて、

別にそれは全然いいしむしろふたりでどっか遊びに行くかーと考えていたんだけど、

ところで髪の毛も伸びてきたことだし

私が行っている美容院(KUNKULUHOです)は金曜と土曜は託児所が使えるので、

土曜は髪を切りに行こうと前々から計画立てていた。

12時しか空いてなかったので、「お昼寝の時間とかぶるな…」と思いつつも予約。

まあ少々お昼寝しなくても大丈夫だろう、

そしてそのあと近くの大丸でぶらぶらしてはどうだと楽しみでもあった。

 

11時半までは大丈夫だった。

早めにお昼を済ませて、30分あれば美容院まで行けるので、

11時半に玄関にスタンバイ。

さあ、靴を履く前に靴下を履きましょうと促してから暗雲が立ち込み始めた。

 

「いやっ、ないっ」と拒否るれんたろう。

じゃあ靴下はもういい。めっちゃ寒いけど素足に靴を履きなさいと妥協案をだすも、

「ないないっ」と断固拒否。

しかたがないので、靴下だけは無理やり履かせ、

そのまま靴なしで自転車のシートに乗せようとしたら、

鮮魚のように暴れる暴れる。

「ちがうちがう~」と大泣きで、決して座ろうとしない。

 

倒れる自転車。へこむかご。飛び散る荷物。

暴れながら泣き叫ぶれんたろう。なだめる私。

あまりにも暴れるのでいったん靴下のまま地面におろすと、

れんたろうはぎゃんぎゃん泣きながらふんぞり返り、

ごっ

と鈍い音をたてて頭をコンクリにぶつけ、

さらに激しく泣き出した。

 

ここまでは私も冷静かつやさしげな感じで、

「よしよし、大丈夫?痛かったねー。だっこだっこ。だっこしてあげるからねー」

とひととおりなだめてすかさず自転車に乗せようところあいを見計らっていたのだが、

ころあいがいつまでたってもやってこない。

ずっと泣いてる、ずっと怒ってるれんたろう。

 

どうやら、抱っこをしたまま進行方向とはまったく別の方向へ行ってほしいらしい。

何で?何があるの?すごい不思議だった。別に何もないぞあっち。

全然そっちには行きたくもないし、それに予約の時間が近づいている。

なだめてだめなら引いてみようということで、

「じゃあね!ママひとりで行くわ。ばいばい」

とひとり自転車に乗って行くふりをしてみた。

 

れんたろう、靴下姿で泣きながら追いかけてくる。

で、私の脚にひしっとしがみついてぎゃんぎゃん泣く。

 

動けない。

ついに抱っこもいや、歩くのもいや、自転車はもっといや状態になってしまった。

美容院へ行くことはおろか、家に帰ることもできない。

通路の真ん中で、ぎゃん泣きのれんたろうとべこべこの自転車に挟まれ

動けない私…

近所の人たちが様子を見に来てなだめようとするも、

まったくきかないれんたろう。

うるさくてすみませんすみませんと謝り倒しながら

腕時計を見ると、すでに予約の時間を過ぎていた。

40分ほどその状態が続いていたことに心底驚くとともに、

ふつふつと怒りが…

 

そのままの状態で、美容院にキャンセルの電話をいれる。

年末だからか予約が立て込んでて今日はもう無理らしい。

いらいらしていたので声に棘が出てしまった。

そんな自分にさらにいらいら。

あちらは何にも悪くないし、むしろ迷惑だろうに…すみません。

 

近所の子供が家から出てきて、れんたろうにみかんをくれた。

れんたろうはみかんに見向きもせずに泣き喚いている。

私は笑顔を無理につくりお礼を言い、みかんを受け取った。

その子のママも出てきて

「大丈夫ですか?」と聞かれる。

「全然大丈夫です」とこたえるつもりが、

「ほんとに頭にきます」と言ってしまった。

 

もうお出かけはなし。

私はれんたろうを無理やりひきはがし、自転車を押しながら歩き始めた。

れんたろうは泣きながら靴下姿で追っかけてくる。

かわいそうだともちろん思った。

でもそれ以上に、疲れきっていたし腹が立っていた。

私はついてきているかだけ確認しながらも、決して待たないですたすた家まで歩いた。

 

家にも入りたがらないので無理やり入れた。

寝室にれんたろうを押しやり、私は居間に入ってふすまをびたーん!と閉めた。

手で押さえてれんたろうが入ってこれないようにした。

れんたろうは泣きながらふすまをどんどん叩いた。

 

かわいそうになり、ふすまを開くと、

飛び込んできたれんたろうが私をばちんと叩いた。

ぶつっと私の中で何かが切れる音…

 

私は彼の大切な大切なパーシーを思い切りぶん投げた。

壁に打ち付けられる何の罪もないパーシー…

れんたろうが叫び声を上げて

「ぱーしー!ぱーしー!」と言って

「わああああん」と泣きながらパーシーを取りにいった。

私はさらにトーマスを投げ、ジェームスを投げた。

そしてこたつに潜り込んで不貞寝した。

 

れんたろうが何でこんなに泣くのか、何をしてほしいのかまったくわからない。

眠たいのかしらんけど、そんならさっさと寝ればいいじゃないか。

理不尽なまでに自分の予定が狂わされることにすごいムカついていた。

 

別に狂わされた予定がそこまで大事だったわけではない。

でも、これまで溜め込んでいた不満が一気に噴出してしまった。

これまで狂わされ続けた予定の数々が、そこで飽和点に達してしまったんだと思う。

 

れんたろうは自分でもパーシーたちを投げていた。

もう何が何だか、お互いよくわかってなかった。

気がついたらふたりとも寝ていた。

のどがすっごく乾いていた。

 

起きてきたれんたろうは、つき物が落ちたように落ち着いていた。

「たいたい」と言うので指差している足を見てやると、

石か何かで傷つけたのか血が出ていた。

靴下でずっと走っていたからだ。

私はれんたろうに謝った。「ごめんね。大丈夫?」

れんたろうは「めんね、だいじょぶー」と言って、私をよしよしした。

 

私はすごく自分が情けなくなった。

1歳の子相手に何やってんだろう。

この子の大事なものを投げたり、入ってこれないようにしたり…

きっと、夫が見ていたらすごく私を怒っただろう。

 

私はパーシーをよしよしして、

「パーシー、ごめんね」とれんたろうの前で謝った。

れんたろうは私に抱きついてすごく嬉しそうな顔で笑った。

 

すごく疲れた。自分がすごくいやんなったから。

れんたろうにではなく、私に原因があるのだ。

火をつけたのはれんたろうだけど、悪い油を溜め込んでいたのは私だ。

 

明日はいい日にしたいな。

 

 

 

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